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海外企業のインセンティブ旅行を日本へ!可能性と誘致のポイント

MICEのプロフェッショナル MPIジャパンチャプター 名誉会長 山本牧子氏に聞く

MICEのうち"I=インセンティブ旅行" の世界での市場規模は 約 8.9 兆円 (2016年)。もしもコロナ禍がなければ 2020 年には 12 兆円に達していたとも言われ、各国がそれらの誘致に取り組んでいます。日本においてもその需要を取り込むことで、訪日インバウンドによる消費額の拡大をはじめとして、大きな経済効果が期待されます。

本記事では地域の自治体、コンベンションビューロー(CVB)、DMO、民間事業者の方などに向けて、ポストコロナにおけるインセンティブ旅行誘致のためにおさえておきたいポイントをまとめました。日本のMICE第一人者として観光庁や東京都のMICE誘致戦略に携わってきたMPI Japan Chapterの名誉会長 山本牧子氏をお迎えし、長年海外/訪日MICE事業の企画・運営、コンテンツ開発に関わってきたJCDの平間との対談記事をお伝えします。

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山本牧子氏山本牧子氏
MPI Japan Chapter 名誉会長
京都 新・都ホテルの宿泊部門に5年間勤務後、フォーシーズンズホテル椿山荘にて料飲部門、国際セールスを担当、フォーシーズンズホテル&リゾート勤務を経て、2000年からバンクオブアメリカ・メリルリンチのイベントプランナーとして勤務。2017年(株)Finesse Hospitality Management を設立。
イベントプランナーとして活動しながら、観光庁や地方行政のMICE関連及びユニークベニュー、コンテンツ開発のコンサルティング等も手がけている。同時にMICE関連の勉強会や講演活動を積極的に行い、国・自治体等の有識者会議の委員を長期に渡り務める。2019年 東京都ミーティング&インセンティブ誘致ガイドラインを監修。
2016年 内閣府 クールジャパン地域プロデューサー就任
2016年 MPI Chair's Award受賞
2017年 観光庁長官表彰受賞

平間令子(聞き手) 平間令子
株式会社JTB コミュニケーションデザイン(JCD)
エリアマネジメント部プロモーション事業 マネージャー
1995年、流通系企業よりJETRO(現:日本貿易振興機構)に出向し、対日輸入促進事業に従事。1996年より同法人のアトランタ事務所に駐在。1997年、当社関連会社に入社後、コンベンション事業、企業ミーティング事業に携わり、2009年までミーティング&コンベンション事業に従事。2014年よりシンガポールに駐在し、現地発のアウトバウンド事業並びにアジア・パシフィック地域の支店支援に従事。主要担当地域は、シンガポール、ベトナム、マレーシア、台湾、フィリピン、カンボジアなど。
2016年帰国し、JTBグループの訪日インバウンド事業会社に出向、訪日MICE事業のうち、特にミーティング・インセンティブ旅行の企画・運営、コンテンツ開発を担当。2021年4月よりJCDの現部署にて、インバウンドプロモーション事業にも携わる。
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(文中敬称略)
※社名・肩書きは2022年5月時点のものです。

  1. 海外におけるインセンティブ旅行とは?
  2. インセンティブ旅行誘致のメリットと傾向
  3. インセンティブ旅行を誘致するためのポイント
  4. インセンティブ旅行誘致におけるJCDの強み
  5. 担当者の方へのメッセージ ~まずは魅力の棚卸し、そして情報発信を

1 海外におけるインセンティブ旅行とは?

平間
早速ですが、MICEの中でも今回のテーマであるインセンティブ旅行について、あらためて教えていただけますか。

山本
インセンティブ旅行とは、ひと口に言えば、企業などで優秀な成績を収めた社員や販売代理店の方々を対象にした旅行です。ただ単純に旅行して終わりというのではなく、多くが旅行中に表彰式や研修等を組み込んで実施されます。昨今のインセンティブ旅行では、ミーティング(M)とインセンティブ(I)を融合して実施するケースが多いですね。

インセンティブ旅行とは
インセンティブ旅行とは

平間
山本さんのおっしゃる通り、お客様の考え方によってインセンティブ旅行を主軸とするのか、それともミーティング寄りの旅行にするのかは様々ですが、垣根はなくなっているように思います。

また、日本で考えるインセンティブ旅行、いわゆる"報奨旅行"に対するイメージと、海外とのそれでは考え方が異なっているようにも感じています。日本ではごほうび的な意味合いで、成果達成の後に余剰した経費を用いて行われるという考えが主流ですが、海外では成果を達成するための「投資」として実施されるという感じですね。

山本
はい、幹部候補者の育成のためにミーティング・インセンティブ旅行を利用する、というようなケースは多いですね。たとえば "リーダーシップオフサイト"などは、海外ならではのミーティングとインセンティブ旅行の融合された形だと思います。午前中はミーティングをし、午後はアクティビティに時間を費やしたり、豪華なディナーを楽しんだり、というようなプログラムをよく行っていました。確かに、日本の場合は成績優秀者へのごほうびのような意味合いで、後追いでインセンティブ旅行をするような印象が強いですよね。

平間
インセンティブ旅行では、特別な体験を通じて社員のモチベーションを上げるだけではなく、オフサイトミーティングや研修によって組織を活性化させたり、交流を深めたり、社員のスキルアップ、ロイヤリティ向上などを目指しているのですね。
MICEの中でも、コンベンションはどちらかというと開催すること、そしてそこから派生する効果が目的という性質が強いですが、ミーティングやインセンティブ旅行においては、実施後の業績向上につながる直接的な効果(ROI=Return of Investment)を求めているところが、大きく異なるように感じますね。

山本
そうですね。そのために一番効果があると感じているのは、リアルで人が接触するという機会の提供でした。参加者同士の交流がアイデアの創出やモチベーションアップといった様々な相乗効果を生み出します。
コロナ禍でオンラインでの会議が当たり前になっている昨今ですが、インセンティブ旅行においてはリアルな体験に価値があることから、オンライン等での代替が難しく、コロナ禍収束後においてもリアルでの開催が見込まれるとも予想されています。

JCD 平間
JCD 平間

平間
ポストコロナに向けて、受け入れる自治体・事業者側としても今のうちに対策をしておくことが必要ですね。

2 インセンティブ旅行誘致におけるメリットと傾向

平間
インセンティブ旅行誘致における自治体・事業者側のメリットと求められることについては、こちらの図にまとめています。

インセンティブ旅行に取り組むメリットと傾向
インセンティブ旅行に取り組むメリットと傾向

山本
なお、例えば海外からのお客様がミーティングやインセンティブ旅行で日本を訪れる場合は、ビジネスの一環ですから主に平日の期間が多いです。そのため滞在先の観光地などは、平日の人が少ない時に需要が喚起されることになります。そういった形で地域の経済に貢献ができるのは大きなメリットですよね。

平間
自治体のご担当者は、まず何から手をつけたら良いでしょうか。

山本
最初は、地域のもっているインフラ・コンテンツの棚卸しをするべきです。ホテルなどのインフラ設備の状況、誘致先へ至るまでの交通手段、観光対応できる要素がどこにあるのか、さらに魅力的なアクティビティ・コンテンツを用意できるかなど、1つひとつを明確に検証してみてください。
その際にはぜひ、最新のインセンティブ旅行ニーズやトレンドを理解している私たちがお手伝いできればと思います。

MPI Japan Chapter 山本牧子氏
MPI Japan Chapter 山本牧子氏

平間
インセンティブ旅行誘致において、ホテルなどのインフラ設備について何か必要な条件はありますか?

山本
国際会議などのコンベンションと違って、ミーティングやインセンティブ旅行では、参加者がほぼ同じ宿泊先に滞在することになります。特に欧米の方々は、ホテルのグレードを重視し、高級ホテルが選択される傾向があります。
こうしたことから、ミーティングやインセンティブ旅行誘致のためには、ターゲットにあった宿泊先の確保は必須条件です。

平間
一方で、大人数を受け入れられるような高級ホテルがない地域もありますよね。こうした地域においてインセンティブ旅行を誘致したいと考えた時は、どのような対策をとれば良いでしょうか?

山本
そうですね。ターゲットをどこにおくかによって可能性は十分あると思います。たとえばアジア圏の企業であればそこまで高級宿泊施設にこだわらない場合もあります。それぞれの地域での諸条件によって、取り込んでいきたいエリアやターゲットを選定することで、インセンティブ旅行の誘致は十分狙えると思います。

3 インセンティブ旅行を誘致するためのポイント

平間
さて、インセンティブ旅行を誘致するためのポイントですが、こちらの4つがあげられます。

① 開催地決定のポイントは、企業側(主催側)のニーズ把握
② 誘致には、まずRFI (Request for Information:情報提供依頼) の呼び込みから
③ RFIへの回答やプログラムなどの提案には、迅速な対応を
④ 地域内のネットワークづくりと連携

山本
①企業側(主催者側)のニーズ把握、そして、②RFI(Request for Information/情報提供依頼・問い合わせや引き合い)の獲得 ③RFIへの迅速な対応 によってはじめて誘致が成功します。そのためには、日々の情報発信や魅力的なプログラムづくりが大切ですし、何よりも日頃から自治体やDMO、民間事業者間の地域内のネットワーク作りをし、情報連携して取り組んでいくことが重要になってきます。
また、地域や自治体間の連携も重要です。海外の方にとって都道府県や市区町村の境は関係ないですからね(笑)。近くの地域で有力なコンテンツがあれば連携していくなど、より広域で取り組んでいくことが必要だと思います。

平間
①の部分ですが、ミーティングやインセンティブ旅行誘致を行う上での行政課題として「実態把握が難しい」ということをよく耳にします。企業(主催者)側が、どこでどんな旅行を実施したのかをオープンにしてくれるわけではないですからね。クローズドな情報を集め、何が課題となっているのかを探る意味でも、常日頃からネットワークを作っていくことも必要ですね。

平間
先ほど、コンテンツの棚卸しが重要というお話がありましたが、各地域の特色を生かした独自のコンテンツ開発をしておき、ニーズにあわせてご提案できる状態にしておくことも大切です。 ポストコロナにおいて、参加者の安全・健康面の必要性が重視されることや健康促進につながるアクティビティ(ウェルネス)、サステナビリティに貢献するアクティビティ、SBNR(Spiritual But Not Religious)のように精神面での充足を求めるアクティビティなどの注目が高まっています。また、人を引き付けるコンテンツには、「特別感」や「何故そこに行くのか、何のためにそれをするのか」等の意義を感じられるストーリーがあればさらに良いと思います。
山本さんは、最近「特別感」のある体験といえば、何が印象に残っていますか?

山本
先日、とある地方でお茶の名産地でもある場所に伺いました。お茶のテイスティングのアクティビティを体験したのですが、最初イメージとしては、普通の和室で椅子に座ってお抹茶をいただく、などかな?と思ったのですね。
場所はきれいなお庭の見える古民家。まずはワイングラスにあたたかいほうじ茶が注がれて、香りを楽しませていただきました。さらに、急須で40℃/80℃のお湯で玉露を淹れたものをそれぞれテイスティング、氷出し玉露をじっくり抽出する様子を見てからいただく、さらに茶葉をごま塩で食べてみる・・・・こんな体験、日本に住んでいてもなかなかしないですよね!これは海外の目線からしても「使えるコンテンツだ!」と思いました。既にある地域の特色や名産物、インフラなどをいかして、訪れた方への特別感はいかようにも演出できるのだと思います。

イメージ
イメージ

平間
その体験は、私もご一緒していたのですが(笑)、本当に好事例でしたね。
インセンティブ向けコンテンツ開発やコンテンツの磨き上げについては、どのようなしつらえで、どのような場所で実施するのか、というのも非常に重要なポイントだと思います。
たとえば、一般の参加者向けには公開していない「特別な」歴史ある文化財の場所を貸し切ってのアクティビティなど。あらかじめ決まった日時に決まった人数のグループを入れ、貸し切りのレンタル料は仮に数十万、と設定しても、十分ニーズがあると思います。観光施設のように常時オープンする必要はないので、施設側にとっても非常に効率的ですよね。

山本
ユニークべニュー※の開発ですね。
※歴史的建造物、文化施設や公的空間等で、会議・レセプションを開催することで特別感や地域特性を演出できる会場のこと。 MICE誘致に大きな効果を発揮する各都市のユニークベニューは日本においても積極展開が求められている。(JNTOサイトより)

平間
山本さんは、東京観光財団のユニークベニュー部会でも部会長を務められる他、神奈川県のユニークベニューの選定に関わられるなど非常に日本のユニークベニュー開発・啓蒙を推進していらっしゃいますが、地域のユニークベニューに期待することはどんなことでしょうか?

山本
そうですね。よくある例ですが、せっかくユニークベニューとして開放しても、規則ばかりで、実際に使用しづらいのは非常に残念なことです。保護のために順守するべきことと利用者への便宜を図ることは両立すると思いますので、フレキシブルに対応していただけると、より可能性が広がるのではないかと思っています。

4 インセンティブ旅行誘致におけるJCDの強み

平間
MICEの中のミーティングやインセンティブ旅行は、BtoBが主となります。クライアント側である主催企業につながる海外のエージェントやDMCとのネットワークといったものが、M&Iを誘致する上では不可欠です。
当社は、MICE企画運営や海外プロモーションにおけるプロフェッショナルですが、国内最大のDMCと言えるJTBグローバルマーケティング&トラベル (JTBGMT)やMICE推進に力を入れているJTB総合研究所(JTB総研)との連携により、総合的なコンサルティング、コンテンツ開発のアドバイス、デジタルマーケティング・プロモーションに至るまで、様々なソリューションをワンストップでご提案します。

山本
JCDは、JTBグループの総力だけでなく、MICE企画運営のプロであることはもちろん、プロモーションまで一気通貫でできるのが他社にはない強みですよね。
お客様の現状や課題を理解して、共に仕事をしていけるパートナーというのは、インセンティブ旅行誘致においてはとても重要です。コンサル・トレーニングからコンベンション(C)に対応できる企業はあっても、ミーティングやインセンティブについてコンサルティングから携わっている企業はほぼありません。JCDが観光庁様の事業を継続して受託しているのも、経験・ノウハウ・実績の蓄積が評価されていることの表れですよね。

MPI Japan Chapter 山本氏 / JCD平間
MPI Japan Chapter 山本氏 / JCD平間

平間
ありがとうございます。これまで、私自身もインセンティブ旅行向けのコンテンツ開発、海外のエージェントを招聘したファムトリップ、海外へのデジタルプロモーション、さらに自治体向けのMICE戦略立案など、数多くのMICE案件を手掛けて来ました。海外におけるトレンドも日々変化している中、ぜひご相談いただければと思います。

5 担当者の方へのメッセージ ~まずは魅力の棚卸し、そして情報発信を

山本・平間
まずはきちんと情報発信をしていくことから始めていただければと思います。今はデジタルの時代ですからきちんとしたホームページの整備、SNSや動画サイト等も活用していきながら、自分たちの自治体の魅力の棚卸しをした後に改めて発信されたコンテンツを整備することからがスタートです。
まずは国内企業のMI(ミーティング・インセンティブ旅行)を狙っていくというのもよいでしょう。

日本の各地域には本当に個性的で、それぞれに隠れた魅力があるはずです。その魅力となる資源を発掘し、いかに磨き上げていくか企てていくのがポイントになります。それらをきちんとターゲットへ向けて情報発信していくことです。これからの時代、単なるプロモーションではなく、その地域ならではの「レガシー」や「コンセプト」を訴求することが主流になってきます。
私たちはこうしたスタートアップの段階から伴走してお手伝いいたします。ぜひ、一緒に新しい可能性を広げていきましょう。

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