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2021.05.25
ニューノーマル時代の周年事業のススメ
エンゲージメントを高めて強い組織へ。
JCD周年事業オンラインセミナーレポート
新型コロナ禍によるニューノーマル時代においてビジネス環境が変化し、企業は様々な場面で変革を余儀なくされています。これまでリアルで行われてきた周年事業においても例外ではありません。JCDでは2021年4月14日(水)に「ニューノーマル時代の周年事業」と題し、その準備や課題、施策、コンテンツについて、株式会社日経BPコンサルティング 周年事業ラボ所長 雨宮健人氏、ギネスワールドレコーズ社 コマーシャル&マーケティング部部長 矢崎正道氏をゲストプレゼンテーターに交え、オンラインセミナーを実施。未来に向けて"人の心を動かす"周年事業にするためには、まず何を考え、どのように具体化していくべきか。様々な取り組み事例をもとに、その極意に迫りました。
- 企業にとって周年事業がもたらす価値とは
(日経BPコンサルティング 周年事業ラボ 所長 雨宮健人様) - 周年を迎える企業様、必見。成功のカギとは?
(JCD ゼネラルプロデューサー 塩谷久美子) - エンゲージメントを高める周年事業コンテンツ事例
(ギネスワールドレコーズジャパン コマーシャル&マーケティング部 部長 矢崎正道様)
(文中敬称略)
1 企業にとって周年事業がもたらす価値とは
=Guest speaker==============================
株式会社日経BPコンサルティング 周年事業ラボ所長 雨宮健人様
PROFILE
日経BPコンサルティング 周年事業に関する研究所の所長を務める。
周年事業担当者ならびに強い企業・マネジメント層に向けて関連情報を発信。
研究員によるコラム記事を掲載したサイト「周年事業ラボ」を運営している。
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塩谷
周年事業を行い、新しい事業のスタートや、組織変革のきっかけにする企業が増えています。なぜ企業は周年事業を大切にするのでしょうか。
雨宮
そもそも企業が長く存続しているのは、1つの努力の証でもあるわけです。企業が10年、20年、さらに100年と続き、きちんと結果を出してきたとすれば、周年事業は企業が事業継続をしてきたことを伝える良い機会になるのです。そのため、最近では事業プロセスの一環として周年事業を組み込む企業が多く見受けられます。これまで取り組んできた企業努力や事業の軌跡を改めて振り返り、そこから先の未来の企業姿勢や施策を発信する場として、周年事業を上手に活用しているのではないかと考えています。
塩谷
企業や学校法人が抱えている周年事業の課題は、具体的にどのようなものがありますか。
雨宮
大きくは2つの課題があります。まず1つ目は周年事業のノウハウが継承されないという問題です。多くの企業にとって周年事業は10年スパンで行われ、同じ担当者が事業にあたることは稀です。もし同じ担当者だったとしても10年も経てばやり方も変わってくるでしょう。
2つ目の課題は、周年事業は長期プロジェクトになる場合が多く、その際、途中で考え方や担当者が変わるケースが多々あることです。長期間にわたるプロジェクトなので、経営層の鶴の一声で方針転換を迫られる事例も多々見受けられます。
このような事態にならないように、"なぜこの施策を実施するのか""なぜこのコンテンツが必要なのか"、目的を明確にして、途中経過も含めて戦略立案し、しっかりとエビデンスを残しておく必要があるのです。これを怠るとプロジェクトの最後の最後で迷走してしまうことになりかねません。
さらに付け加えるなら、責任の所在をしっかりと把握しておくこと。周年事業は関わる人が多くなるので、役割分担をきっちりとしておかないと、責任が不明瞭になってしまいがちです。
塩谷
新型コロナ禍の前後では、周年事業に変化は感じられましたか。その際の課題や気をつけるべき点とは。
雨宮
やはりコロナ禍により、リアルで開催するイベントが激減しました。お客様の中にはこうした時代でも、実際に集まって対面で成果を発表したいという声も多くみられます。しかしながらその代替として、オンラインやハイブリッドイベントへ上手に移行させていくべきでしょう。オンラインなら物理的な制限もなくなりますので、海外や地方にある拠点といった遠隔地間をつなぐハードルが低くなるメリットを活かすべきです。
また、コロナ禍によって消費者サイドの意識も変わりました。これにより企業もブランドの再定義の必要性がでてきます。こうした状況においても、オンラインならではの利点を活かし、動画などをうまく使えば、ブランディング形成も十分可能となるはずです。
オンライン化に限らず大切なのは、ターゲットごとに戦略を策定し、誰にどういう状況でどのような手段を使って伝えるかを明確にしておくこと。これが以前にも増して重要度が高まっていると感じています。
さらにコロナ禍では、"デジタルアーカイブ"のニーズが増えてきましたね。社史をデジタルでアーカイブ化する、いわゆるDX化の流れですが、こちらは周年事業以外でも活用度が広がっています。いずれにしても目的を設定した上で、それを達成する施策をプロットすることが大切になります。
2 周年を迎える企業様、必見。成功のカギとは?
=Speaker=================================
株式会社JTBコミュニケーションデザイン 塩谷久美子
PROFILE
イベント業界キャリア20年以上。企業の経営課題の1つである「コミュニケーション課題」をイベント・プロモーション・HR施策など複合的な手段で解決するコミュニケーションデザイン提案を得意としている。数多くの周年事業をプロデュース、成功に導く。
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塩谷
周年事業成功のカギは、準備段階の段取りと基本設計が全てといっても過言ではありません。最初に「周年プロジェクトの実施目的を全社的に明確化」すること。その際に必ずトップや経営層に対してコミットメントを得ておくことが大切です。これが決まれば「誰に対して実施するのか」、「何を伝えるのか」、「実施時期や実施規模」が自ずと決まってくるでしょう。
周年事業を考える上で、多くの方は、最初にCIの刷新だったり、イベントを企画したり、周年記念物の制作、プロモーション・ブランディング、組織改革といった施策面からスタートしがちです。しかしながら、どんな方法を用いるかといった施策については、基本設計の最後の段階で考えれば良いでしょう。
塩谷
次に周年事業のスケジュールについてお話させていただきます。私どもJCDでは、周年を迎える周年イヤーの年だけでなく、その前後の期間が大切だと考えています。2~3年前から動き始めるプレ周年イヤーでは、社内告知から始まり、どうやってピークまで盛り上げていくかを中心にプロジェクトを進めるのです。そして周年イヤーが終わった後は、ポスト周年イヤーとして位置付け、イベント後の施策、ステークホルダーへの施策など、新たな取り組みを始めていきます。これらを実施するにあたり、ポスト周年イヤーでは、効果測定が重要な位置を占めるのです。
塩谷
またイベントに関してですが、雨宮様のお話にもあった通り2020年はリアル開催予定だったほとんどのイベントが中止に追い込まれました。こうした事態を踏まえ、周年イベントも状況に応じてフェーズ毎に「リアル開催」→「ハイブリッド開催」→「オンライン開催」へと順を追ってシフトした対応をとっています。場合によっては「中止」も選択肢に含まれました。いずれにしても、第一段階としてはリアル開催を前提に準備して、徹底的な感染症対策を前提に運営計画を立てる必要があります。
塩谷
第二段階では「ハイブリッド開催」の検討に移ります。これは「リアル開催」と「オンライン開催」を両方の良い部分を取り入れた手法です。実施方法は大きく分けて3つ。会場に集まる人数を最小限に絞り、プレゼンテーターだけがリアル会場に集まるパターン。さらにリアル会場を全国に分散させて同時中継でオンラインを使って繋ぐ方法、そしてその両方をミックスさせた選択型のリアル参加と個人配信をあわせたやり方があります。このように様々な手法がありますが、まずは周年事業の目的を明確化して、その目的を実現化させる上で最適な手法を採用することが大切です。
塩谷
周年事業施策を通じてエンゲージメント課題を解決した事例もあります。あるレジャー系企業では、周年事業の前後に従業員を対象としたアンケート調査(WILL CANVAS)を実施しました。事前に課題を想定し、それを可視化した上で周年事業を実施したのです。結果的にはエンゲージメントスコアの上昇という結果につながりました。周年事業で大切なことは、課題の測定から施策に対しての効果測定まで、一貫して実施することで初めて意味を成すと私たちは考えております。
3 「エンゲージメント」を高める周年事業コンテンツとは
=Guest speaker==============================
ギネスワールドレコーズジャパン
コマーシャル&マーケティング部 部長 矢崎 正道様
PROFILE
世界中からあらゆる世界一を収集し、公式認定する組織であるギネスワールドレコーズジャパンにて、プロモーション、マーケティング施策のコンサルティングを担当。
近年、ギネス世界記録™を使った「世界一への挑戦」は、企業・商品のプロモーションやキャンペーン、地域活性、社内イベント・周年記念イベントでの組織エンゲージメント向上目的で活用されることも増えているという。
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塩谷
ギネス世界記録™が、組織のエンゲージメント向上を目的とした社内イベント・周年事業で活用されているとのことですね。"リアルで集えない時代の中で、エンゲージメントを高めた施策"についてぜひ教えてください。
矢崎
ビフォーコロナ時代の周年事業でギネス世界記録™の活用は、主に社員同士の一体感の醸成はもとより、自社製品を使った挑戦を盛り込む内容などで、リアルイベントで全員が集まって自社へのエンゲージメントを高める企業が多かったですね。それがコロナ禍により大きく変わった印象を持っています。昨年は世界的にも約半分くらいがオンラインでギネス世界記録™更新を成し遂げました。その中でもリモートワークで、社員同士のつながりが希薄化したことへの対策としてチームビルディングを求める声が多かったです。
塩谷
JCDで周年記念事業をお手伝いしたシステム開発企業様でも、ギネス世界記録™オンライン挑戦を実施しました。この企業は、業務上普段なかなか社員が一堂に会す機会がないので、周年記念イベントにおいて、社員全員が集まれる内容を企画していたのです。コロナ禍前はそれこそリアルイベントで一体感を醸成させるプログラムを中心に進行していました。ところがコロナ禍により、リアルイベントをオンライン開催へとシフト。そこでギネス世界記録™ オンライン挑戦を行ったのです。結果としては無事ギネス世界記録™も達成し、社員だけでなくその家族に至るまで社長メッセージを届けることができました。その後、社員の一体感やモチベーションアップにつながったと評価を得ています。
■事例詳細:https://event.jtbcom.co.jp/voice/voice-1759/
矢崎
コロナ禍の2020年は、様々な企業様から何らかの形でオンラインによるギネス世界記録™へ挑戦できないか?という問い合わせを多く頂きました。当初は私自身オンラインイベントが浸透していくかどうか半信半疑でしたが、コロナ禍の状況を逆手にとって、オンラインだからこそできる全国や海外を繋いだ企画を提案することで、多くの企業様が新しい時代のエンゲージメントを達成することに貢献できたと実感しております。
塩谷
JCDとしても、ギネスワールドレコーズ社のオフィシャルパートナーとして、ニューノーマル下での課題解決につながる周年イベントでの施策をこれからもお客様にご提案していきたいです。
周年事業はあくまでも、企業課題達成に向けたきっかけに過ぎません。私たちJCDでは周年事業を通じて企業様が達成したい目的に寄り添い、インナー・アウターを問わず各種施策の選定・進行・効果測定に至るまで、一貫してトータルにそのプロセスに伴走していきたいと思います。
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