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障がい者アスリート小池岳太が語るコミュニケーションデザイン(4)

小池岳太と直属の上司が語りあう、
パラアスリートと所属企業とのいい関係とは

小池岳太選手がJTBコミュニケーションデザインに入社したのが2014年11月。2016年に現在の営業企画部に配属となりました。黒崎秀将さんは小池選手にとって、直属の上司です。一人のパラアスリートが入社して、社内のコミュニケーションに好循環の化学反応をもたらしました。さらに社員の家族や取引先企業などにも、少しずつ変化の輪が広がっていると、黒崎さんは実感しているそうです。対談・第4回は、コミュニケーションの中心から見える風景、人と人とが融和していくプロセスについて語り合ってもらいました。
<聞き手:スポーツジャーナリスト 宮崎恵理氏>

入社当時は新鮮に感じた「パラアスリート社員」

----小池選手が入社した当初の印象はいかがでしたか。

黒崎
実際に会う前には、「パラリンピック」という大会の存在は知っていましたが、積極的に観戦したり情報を集めたりすることはありませんでした。だから、特別な人で、自分とはだいぶ距離がある人という先入観がありました。

小池
そもそも、社員の方に限らず一般的に、パラスポーツがどんなものか、障がい者のアスリートはどんなことをしているかということをご存じないのは普通ですから(笑)。

黒崎
初めて会ったときの小池選手は、テレビの向こう側にいるアスリートではなくて、自分に近い社会人という第一印象でした。かつて競技に打ち込んでいたという社員はいますが、アスリート社員というのも小池選手が初めてですから、とても新鮮でしたね。

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ブログや社内イベント、オフィスでの挨拶で近づいた社員との距離

----2016年からは同じ部署の上司と部下という立場で一緒に業務を担当されています。印象やコミュニケーションも、変化がありましたでしょうか。

黒崎
実は、違う部署にいる時から、徐々に意識は変わっていました。というのも、小池選手はアルペンスキーの大会に出場したとか、合宿で海外遠征に行っているなどのニュースを、積極的に社内ブログで発信してくれるからです。また、会社に出社した時など顔を合わせると、元気に「おはようございます!」と挨拶をしてくれる。もちろん、僕だけでなくどの社員も同じように接してくれて、小池くん頑張ってるね、というふうに意識が変化していくんですよ。

小池
入社した当初、当時の社長からいただいた言葉が「自分から発信していきなさい」ということでした。そのアドバイスを聞いて、社内ブログで自分の活動内容を発信するようになったんです。それを今も続けているわけですが、そのことで、実際にはあまりお会いしたことがない社員の方からも、たまに業務でメールでの連絡をする時などに「いつも活躍、拝見してますよ」などと、一言添えていただいたりして、それがすごく嬉しくて力になっているんです。

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黒崎
同じ部署になってからは、彼のアスリートではないビジネスパーソンとしての部分で接する機会が増えました。例えば、営業企画の業務の一つに、社内の交流イベントの開催があります。月1回程度、社員同士の交流を図るイベントですね。いくつかのグループ会社が統合したばかりだったので、社員同士のコミュニケーションをもっと密にするための活動は、とても大事なことでした。このイベント開催に、小池選手が大いに戦力になってくれています。

小池
私自身をテーマにした回も2度ほど開催して、その時には自分のアイデアなども盛り込んでもらいました。

黒崎
社内には、やはり小池選手とは一度も接点がないという社員もいますからね。イベントの準備から小池選手には、一緒に携わってもらいました。

小池
夏目堅司さんがレースで使用するチェアスキーをお借りして、社員の方にも触ってもらったり、実際に乗ってもらったりしました。

小池岳太
社内イベントでの、チェアスキー実演の様子

黒崎
小池選手が使っているレース用のワンピースを着用してもらって、長い競技用のスキーも持ってきてもらったりしたね。その姿で記念撮影やサイン会もしました。小池選手のことを知る機会が増えることで、少しづつ社員に一体感が高まったように思います。社員同士のコミュニケーションを構築していくことに、小池選手がすごく役に立ってくれているわけです。

小池岳太
社内イベントでの、サイン会の様子

パラアスリートだからこそ強まる、社内での発信力・集客力

----以前から、パラリンピアンとして小中学校や企業など、さまざまなところで講演会やイベントに登壇することはあったかと思いますが、それと社内での交流イベントではどんな違いがありますか。

小池
社員の一人として、準備するところから始めることができて、社員の方々がご自身の仕事に対してプロフェッショナルに取り組む姿は、とても勉強になりました。企画から当日までの準備、設営、進行など、それぞれのパートごとに役割があって、チームワークで進められて行くんです。部署の会議に出席していても、メンバーが議論を戦わせている姿に緊張感を感じました。

黒崎
このイベントは、あくまでも自主参加なんです。だから、終業後の時間に行われることもあって、参加しようかどうしようかと迷う人もいる。そんな時に、小池選手が直接「ぜひ、参加してください」って一人ひとりに声をかけると、結構集まってくれる。小池選手の力ですし、助かっていますよ。

小池岳太
多くの社員が参加した社内イベント

パラアスリート社員が、社員同士の接着剤に

----業務や社内イベントを通じて、社員の方々にはどんな変化がありましたか。

黒崎
小池選手という存在によって、お互い知らない者同士だった社員の間の距離が一気に縮まりました。社外からお招きしたゲストと違って、小池選手は社員なので折に触れ社内で顔をあわせることもある。まさに社員同士の接着剤になっていますね(笑)。

小池
入社して4年が経ちますが、最近ではこれまで以上に一緒に仕事をしたいというお声をかけていただくことが増えてきました。例えば、医療系の学会運営を担う部署があって、義肢装具の学会の際には、会場に小池スペースを設営して競技用の自転車やスキーなどを展示しました。また、自転車の練習用のローラーを持ち込んで、実際に片手でどのように自転車のハンドル操作をするかという実演をする機会もありました。

小池岳太
当社が運営する義肢装具の学術大会にて

黒崎
アスリートとして、スポーツ関連のアドバイザー的な役割を担うことも増えてきましたね。

小池
はい。そういう部分でお役に立てるのはとても嬉しいですね。転職した当初から、これまでのパラアスリートとしての経験を、何か業務で生かしたいという思いがすごくありました。そのチャンスを少しずついただけています。メールなどで業務のやり取りをすることは海外に滞在していてもできますし、競技と並行して取り組むことができる仕事もあるのだということを実感しています。

「応援」の輪の広がりによる、社内コミュニケーション活性化

----一方で、社員のみなさんが小池選手を応援するという活動では、どんなことがありますか。

黒崎
社内のサークル活動として、スキーサークルがあります。そのメンバーが、小池選手が出場する国内大会の応援&スキーツアーを組みました。

小池
2年前の冬ですね。長野県の八方尾根スキー場で、1日はジャパンパラ競技大会の応援で、翌日一緒にすべるというツアーでした。初めて会社の方々がご家族も含めて大勢応援に見えて、本当に嬉しかった。すごく思い出深いんです。

黒崎
私自身はそのツアーには行けなかったので、とても残念です。レースで優勝した小池選手と一緒にすべれるので、参加者はすごく楽しかったと思いますよ。

小池
ジャパンパラの会場では、チェアスキーの選手や片足ですべる三澤拓選手の姿をみて、社員のお子さんたちが「すごーい!」と感動していた姿も印象的でした。選手に「なぜ、足がないの?」と率直に疑問を口にする。それもとてもいい機会だなって思いました。

黒崎
そうそう、子どもということでは会社のファミリーデーでも小池選手には活躍してもらいましたね。社員の家族が会社訪問するという日で、授業参観の逆パターン。働くお父さんやお母さんを見学に来る日です。小池選手もホストとして家族を迎え入れる役目。「パラリンピックで活躍する選手だよ」と教えてあげると、小池選手は気さくに子どもたちのサイン攻めに応えていました。うちの子どももサインをもらいましたよ。

小池岳太

小池
そういうイベントなどを通じて、社員のみなさんだけでなくご家族の方からも応援をしていただいているのが嬉しいです。平昌パラリンピックへの出場が決まったときには、お子さんたちからもたくさんの激励のお手紙などをいただきました。

小池岳太
社員の子供が小池選手応援のために制作した作品

黒崎
ですから、平昌大会のときには、本当に社員全員で盛り上がりました。社内向けのSNSがあるのですが、平昌大会が開幕してから利用者数が一気に伸びました。日本と韓国では時差がありませんから、SNSで「今、スタートしました」「第1チェックポイント何位です」というようにリアルタイムでコメントが書き込まれていく。それを見て、社長も「いいね!」をクリックしたりしていました。「GO! GAK」キャンペーンもありました。休憩ルームのところに小池選手の等身大写真が貼ってある。その写真と一緒に記念撮影してSNSに投稿するんです。

小池
社内コミュニケーションのいいツールになっていましたね。

小池岳太
「GO! GAK」キャンペーンでの社内SNS投稿写真

「私の会社の社員が出場!」で、パラリンピックの社内認知が急拡大

----平昌応援ツアーも開催されたとか。

黒崎
はい。社員で参加者を募って、2度の週末にツアーを組みました。私も現地に行ったひとりです。パラリンピックには小池選手だけでなくさまざまな障がいの選手が出場している。もう、本当に感動しました。目の前で白熱したレースを見て、さらにパラリンピックへの興味が高まりましたし、自分の中にあるスポーツの幅がすごく広がったと思っています。これは、実際に会場で見ないともったいない、と実感しました。現地からのSNS発信にも力が入りました。選手を知っていることは、大きなきっかけになる。小池選手は、そういうきっかけを作ってくれました。

----全国のグループ会社からの応援もあったとお聞きしています。

黒崎
出場が決まってから、JTBグループ全社をあげて応援しようという空気がさらに盛り上がりました。グループ内の広報誌などでも取り上げられました。全国に小池ファンがいるんですよ。

----取引先の企業などでも反響はありましたか。

黒崎
実際、私自身おつきあいのある会社の方から「テレビで応援席にいる黒崎さんの姿を見かけましたよ」と、話題が広がったということもありました。メディア記事等で小池選手の所属名として当社の名前が掲載されることもあり、「御社の小池選手がパラリンピックに出場されましたね」とお声をかけていただくこともありました。広がりを感じています。

小池岳太
社内報でも、応援を呼びかけ

パラアスリート社員のチャレンジは、社員にも刺激を与える

----パラアスリートの小池選手の存在意義が、表れていますね。

黒崎
平昌パラリンピックに出場したことだけではなく、そこに至るまでに小池選手が激しい練習を積み重ね、けがをしたときには精神的に苦しい状況であってもくさらずに日々できることに取り組む姿を、ずっと間近で見続けることができた。目標達成をあきらめない小池選手は、すごく社員に好影響を与えていると思います。スポーツに限らず、どんなことにもチャレンジ精神を持って取り組むというメッセージを、小池選手の姿を通して我々社員は感じ取っているんですね。

当社では、大きな案件やプロジェクトを成し遂げるなどの業績を残した社員を1年に1度表彰するアワードがあります。2018年度の表彰式で、小池選手が社長特別賞を受賞しました。表彰の趣旨は、平昌パラリンピックに出場したことだけではなく、そこに至るまでのチャレンジを讃えるというものです。スポーツ活動を通じて、会社全体、社員一人ひとりのチャレンジにつなげてほしいという表彰でした。小池選手が入社して4年。一つの大きなステップになったと思いますね。

小池岳太

小池
平昌パラリンピックをきっかけに、本当にみなさんにパラリンピック、パラスポーツを知っていただいたという手応えがあります。ここからさらに、社員の皆様、そして会社にどう貢献できるか。これからが本当の挑戦だと思っています。

黒崎
今後は自転車競技としての小池選手ですね。

小池
自転車競技者としては、まだまだ未熟者。ただ、スキーの時に比べると、国内でトレーニングする時間が多くなります。だからこそ、自分の時間をやりくりすれば競技以外のチャレンジもしやすくなる。会社に貢献できる時間を増やすことができると思っています。また、自転車では、練習用のローラー台と自転車があればどこでも練習ができますし、それを会社に持ち込んで、私が練習する姿を直接見ていただくこともできます。スキーとは違う発信の仕方ができますから、そこも楽しみですね。

小池岳太

黒崎
小池選手が入社したことで社員が得たものはとても大きいです。刺激も受けたし、一体感も生まれた。2020年の東京大会では、当社だけで小池選手を独占するのはもったいないと思う。グループ会社をも超えて、東京全体、全国で小池選手の活躍を共有できるようにしていきたいですね。

小池
今後も、さらにそういう存在になれるように精進します。そのためにもスキー競技の過去を生かしつつも、これからは自転車競技者として貪欲に挑戦し続けてしっかり結果を残していきたいと思っています。

黒崎
小池選手というアスリート社員がいることで、社内のコミュニケーションが活性化された成功事例。それを対外的に広めていき、社会的な提案にもつなげていきたいと思っています。

小池
社員の一人として貢献できるよう頑張ります。これからもよろしくお願いいたします。

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