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JTBコミュニケーションデザインの様々な取り組みをご紹介します。

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JCD×企業×子どもたちの未来で切り拓くプログラミングスタジアム

~今年のテーマは「地球にいいことしよう!」~

日本だけでなく世界中で深刻な自然災害が多発している今、地球環境に変動が起きていることは、誰の目にも明らかです。人間の活動によって地球が傷つき、その結果、私たちの暮らしに大きな影響が生じています。環境問題への取り組みは、社会全体が直面している喫緊の課題といえるでしょう。サステナビリティを重視するJCDでは、具体的な施策を通じて社会的な責務を果たしていきたいと考えています。その一つが「誰でも楽しめるプログラミング」をコンセプトに実施する『プログラミングスタジアム(URL:https://jcdpgstadium.jp/)』。小・中学生を対象に、2021年から始まりました。第4回目を迎える今年は、「地球にいいこと」をテーマに、さらに一歩踏み込んだサステナビリティの取り組みを進めます。「子どもたちはもちろん、協賛企業とともによりよい社会を共創したい」という想いを込めて、プログラミングスタジアムを通じてJCDが目指す社会について、事業共創部の田中と佐野が語り合いました。

「誰一人取り残さない」学びの場を提供

―プログラミングスタジアムとは、どのような事業ですか?

田中
プログラミングスタジアムは、「子どもたちに平等に学ぶ場を提供し、自由な発想で学びの可能性を広げ、未来につなげていきたい」という想いから生まれたプログラミングコンテストです。「誰でも楽しめるプログラミング」をコンセプトに、年齢やスキルに関係なく、誰もが参加でき、楽しく学びながらプログラミングにチャレンジできます。この事業を通じて、「誰一人取り残さない」学びの場を提供することを目指しています。

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佐野
小学校では2020年、翌年には中学校でプログラミング教育が「義務化」されました。しかしプログラミングを教えられる人や環境は、学校や家庭によって大きな格差があります。そこで、ツールの有無や知識の格差にとらわれることなく、プログラミングを体験したいすべての子どもたちに機会や場を提供しようと考えました。

―プログラミングスタジアムを始めたきっかけを教えてください。

田中
プログラミング教育の入り口で困っている先生が少なくないという話を耳にし、プログラミング体験ツアーのような企画でサポートできないか、というアイデアが生まれました。そして、作文なら作文コンクール、絵なら絵画コンクールがあるように、プログラミングも成果を発表する場があれば、子どもたちがよりポジティブに取り組めるのではないかと考えたのがきっかけです。

―運営はどのような形態で行われていますか?

田中
プログラミングスタジアムは、実行委員会形式で運営しています。コンテストの骨格を構築する実行委員会の中には、現役の先生や教師経験者など、教育関係者も参画しています。また、2023年度の第3回目では、プログラミングスタジアムの趣旨にご賛同いただいた出版会社やパソコンメーカー、不動産会社、リサイクル企業など7団体にさまざまな形でのご支援をいただきました。

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子どもたちオリジナルのテーマ設定にはSDGs視点も

―2023年度開催の第3回目プログラミングスタジアムについて伺います。応募作品はどのような傾向がありましたか?

佐野
第3回大会は、あえてテーマを設定せずにどんな作品でも歓迎する形にしたところ、その結果、多くの参加者がゲーム制作に取り組みました。既存のゲームを自分なりにアレンジした作品や、自分でテーマを設定してストーリーを作りあげた子どもたちもいました。ゲーム以外にも、紙芝居形式の作品や〇×クイズで知識を共有するタイプの作品も見られました。

―グランプリを獲得したのは、中学1年生(2024年3月時点)のYuzukaさんでした。

佐野
Yuzukaさんのプログラミング作品は、「プレイヤーが、ストーリーに沿ってゲームの中の町に落ちているゴミを拾い、町をきれいにしながらゴールに向かう」という内容です。分かりやすいストーリーで、かつSDGsの視点が組み込まれ、Yuzukaさんのオリジナリティが発揮されていました。

Yuzukaさん 【Yuzukaさんの感想】
●応募の経緯
先生からコンテストの話を聞いて、制作に1年4カ月かけた作品を発表しました。最初は海の世界をテーマに作りましたが、沖縄に行った際に環境問題に興味を持ち、作品に環境要素を加えました。
●作品のポイント
・苦労したところ:シナリオを考えるところ
・楽しかったところ:教室で掲げた(作品を作ってコンテストに応募するという)目標を達成できた。
・楽しんでもらいたいところ:分かりやすいシナリオを心掛けたので、SDGsを学びながら楽しんでほしい。
●プログラミングを始めるきっかけは?
小学校の時にパソコンの授業でゲームをやって、自分も作ってみたいと思いました。
●今後のプログラミング意欲
小学校4年生の秋から3年間継続しています。これからも続けたいです。
●将来の夢は?
薬剤師さんになりたいです。

同時開催のプログラミングワークショップが大人気

―コンテストと同時開催で日本全国で行われた、ワークショップキャラバンについて教えてください。

田中
プログラミングスタジアムの1回目、2回目は告知から実施まですべてオンラインでしたが、2023年度開催の第3回目は日本全国を回り、対面での参加無料のワークショップを実施し、全国14カ所で379名の子どもたちが参加しました。また学校や自治体からの要望と協力を得て小学校でもワークショップを実施しました。こちらは大阪府東大阪市内の3校と北海道の別海町1校で開催し、268名が参加。全ワークショップで647名の子どもたち、生徒の皆さんに参加していただきました。

佐野
私も全国各地を巡りましたが、子どもたちは、パソコンや電子機器の扱いに抵抗が少ないように感じました。また、のめりこむ子はものすごい集中力で、保護者の方が横で驚いている様子が印象的でした。一方で、まだまだパソコンやタブレットに慣れていない子どもや保護者の方も多く見受けられ、地域や環境によるデジタルリテラシーの格差も目の当たりにしました。何でもスマホでできる時代ですから、なおさら門戸を広げることが大事だと実感しました。

ワークショップキャラバンの様子
ワークショップキャラバンの様子

【ワークショップキャラバン参加者の声(抜粋)】
●満足度 平均4.65/5点満点
<子どもの感想>
・初めてスクラッチをしましたが、とても楽しくできたので家でも作ってみたい
・今までゲームをする側だったけれど、作るのもすごく面白かった
・家でやった時は難しくてあきらめていたけど、今回教えてもらいながら説明の本があったので楽しくやれた
・これからもイメージや発想をふくらませて、それをプログラミングして形にしていきたい
<保護者の感想>
・親子で楽しい時間を過ごせました。よい機会をいただきありがとうございました
・初心者にも大変楽しい雰囲気で、意欲的に取り組めた様子。また開催してほしい
・始まる前は全く興味がなかった子どもが、始まると興味深くパソコンを触って楽しんでいた
・プログラミングには、親も本格的に触れる機会がなかったので、とてもよい経験ができた

プログラミング教育のデモンストレーションにもなった小学校でのワークショップ

―学校、自治体の反響はいかがでしたでしょうか?

佐野
小学校でのワークショップは、教え方に悩む先生方にとって楽しく授業を進める一つのデモンストレーションとして役立ててほしいという思いで実施しました。先生からは、「子どもたちが能動的に取り組む姿が印象的だった」、「障がいを持つ子や積極的に発言できないタイプの子も『これならできる、楽しい』と生き生きと取り組む様子を目の当たりにして驚いた」という感想をいただきました。また、不登校の生徒がこのワークショップには出られたというケースもありました。イベントとしても価値があるし、学校のPRにもなるという評価をいただき、とても嬉しかったです。

目的があると学習意欲が高まることを実感

―今大会を振り返って、実感している成果を教えてください

佐野
東大阪市の小学校では、「東大阪市を世界にPRしよう」をテーマに設定しました。先に明確なテーマにしたことで事前学習が進み、ゲームの作り方を単に学ぶだけでなく、プログラミング学習に対する意欲が大きく変わることを実感しました。さらにローカライズしたコンテストとしてワークショップに参加した子どもたちを対象に「東大阪市PRプログラミンググランプリ」も開催しました。プログラミングは目的ではなくてあくまでも手段。考えたことをどうまとめて発表するのかを、プログラミングをして表現することは、子どもたちにとってすごく楽しいことなのだと気づきました。

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小学校でのワークショップの様子

第4回大会は「地球にいいこと」をテーマに作品を募集

―第4回プログラミングスタジアムについて教えてください。

田中
2024 年7月1日から募集をスタートし、9月からワークショップキャラバンをスタートする予定で企画を進めています。第4回大会は「地球にいいこと」をテーマに作品を募集します。JCDはサステナビリティを通じた事業に力を入れており、プログラミングスタジアムも「誰一人取り残さない学びの場をつくろう」という想いからスタートしました。折しも今年は元日から大きな地震に見舞われ、改めて防災について考えさせられました。この経験を踏まえ、「地球にいいこと」をテーマに、私たちがよりよい地球環境にするためにできることを子どもたちや協賛企業とともに考えるきっかけにしたいと思っています。

佐野
プログラミングスタジアムは、単なるプログラミング技術を競うコンテストではありません。発想力や表現力、自分なりの創意工夫がみられるオリジナリティが評価のポイントで、ここが一般的なコンテストとの大きな違いです。「地球にいいこと」がテーマとなり、サステナビリティに関心が深い企業とのタイアップも期待しています。今回もキャラバンで全国を回りますが、もっとたくさんの企業や自治体を巻き込んで、できれば同時多発的に実施したいと考えています。これにより、より広範な地域で多くの子どもたちに参加の機会を提供し、プログラミングへの関心を高めることを目指します。

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サステナビリティに関心のある企業はぜひ仲間に!

―サステナビリティに関心のある企業は、どのようなかかわり方ができるでしょうか?

田中
プログラミングスタジアムは、子どもたちの発想力を目の当たりにできるイベントです。子どもたちが、「地球にいいこと」を表現する場をサポートしてくれる方、協賛してくれる企業や同志と一緒に、この企画を盛り上げたいと思っています。具体的には、協賛金提供だけでなく、会場や技術をご提供いただける企業や団体様も募集しています。
JCDが目指したいことは、二つあります。一つは、新たな社会価値の創出に協力いただきながら、パートナー企業様に経済価値を提供することです。企業のプレゼンスを子どもや保護者の方々、学校や先生方に知ってもらい、製品の訴求や販売促進、ブランドのイメージ向上につながる関係性を構築したいと考えています。もう一つは、この事業をサステナブルなものにしていきたいと考えています。プログラミングコンテストに協賛いただくことを通じて、サステナビリティとCSV(※)を両立する、新たなモデルケースを生み出すことを目指します。
※CSV(Creating Shared Value)は、企業が自社の事業や製品を通じて社会課題の解決に取り組み、かつ利益を得ようとする考え方のもと経営を進めること。

―「地球にいいこと」をしたいと考える企業にとって、今が行動するチャンスかもしれませんね。

佐野
企業にとって価値があり、かつ子どもたちや保護者にも喜んでいただけるようなパッケージを組み、その延長線上にコンテストがあるという形が理想です。プログラミングはあくまでアウトプットの手段のため、体験型イベントや付帯イベントなども実施し、インプットからアウトプットまでをセットとした学びの機会を一緒に考えていきましょうという提案をしています。例えば、工場や研究所見学、一般には公開していない貴重なシーンや舞台裏が見られる、体験できるといったことになれば、参加者のモチベーションも上がります。体験価値が上がれば、「プログラミング」という単語に苦手意識を持つ人にも体験するきっかけが提供できると考えて、あれこれ模索しています。

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目的設定で地域活性化や地元愛の醸成も可能

―自治体にとってもメリットがありそうですね。

田中
東大阪市の場合、まさに「東大阪市のいいところを世界に発信しよう」ということで、観光や地域活性化につなげる目的でのプログラミング体験ができました。体験を通じ、「東大阪っていい街だな」と自分が住む街を誇りに思うようになった子がいるかもしれません。町工場や商工会議所、その地域の産業と組み合わせて地域の問題をあぶりだすなど、いろいろな切り口があり面白いです。ワクワクしますよね。

プログラミング教育を通じてよりよい社会を創造したい

―「地球にいいこと」をテーマに、子どもたちはもちろん、企業や自治体にとっても有意義なイベントになりそうです。改めて、プログラミングスタジアムを通じて、JCDが社会に提案していきたいことを聞かせてください。

田中
進化し続けるデジタル社会の中で、「パソコンはどうやって動いているの?」「映像はどうして動くの?」など、子どもたちが疑問を持ち、自らその仕組みを知ることはとても大切です。さらに、「こうしたらもっと良くなるのでは?」と考える力を持ち、自分で挑戦する。これがプログラミングを学ぶ最大の理由ではないでしょうか。その大切さをたくさんの子どもたちや大人たちにも知ってもらうことで、よりよい社会を作っていきたい。それが、私たちの考えです。

佐野
できることだけではなく、「できないことを経験する」のも大切なのではないでしょうか。挑戦への第一歩を踏み出せる場を準備することは、社会的な意義があると思っています。

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―最後に、プログラミングスタジアムにかける想いと、本記事を読まれている企業や団体の皆さまにメッセージをお願いします。

佐野
プログラミングスタジアムは、世の中の「困ったこと」を解決するのに、プログラミングが役立つという気づきを得てもらう場所です。「誰でもできる」と知ってもらうことで、世の中が少し変わると思います。子どもたちにとってワクワクする場所、楽しみながら課題を解決するための手段としてのプログラミングを身につけられる場を盛り上げるためにも、一緒にできる仲間や企業をもっともっと増やしていきます。

田中
企業と地域がパートナーシップを組んで、学びの場を提供していくことは、サステナブルな未来を切り開くことにもつながります。JCDだけで目指す未来は創れません。「誰一人取り残さない学びの場」をともに創り上げたいという思いに共感していただける企業様のご協力を得て、大きなムーブメントを創っていけたらと思っています。

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