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2026.01.27
万博の先にある大阪へ。対話から始まる、世界に選ばれる都市のつくり方
~ 二つのラウンドテーブルから見えてきた、都市の価値を育てる視点 “選ばれ続ける都市”とは ~

2025年大阪・関西万博を経て、大阪は都市として次のステージへ進もうとしています。万博によって生まれた熱狂や交流を、一過性の成果として終わらせるのか。それとも、この都市ならではの価値として磨き上げ、世界に選ばれ続ける都市のあり方へとつなげていくのか。いま問われているのは、イベントの成功そのものではなく、万博の先に描く都市の方向性です。
株式会社JTBコミュニケーションデザイン(JCD)と一般社団法人日本地域国際化推進機構は、都市の未来を多角的に考える対話の場として『DIALOGUE OSAKA~未来都市のための対話:アフター万博、大阪の未来ビジョンを探る』を堂島浜タワー16階「WowUs(ワオアス)」で開催しました。都市ブランディングや体験価値、ナイトタイムエコノミー、官民連携、そして次世代への継承など。国内外で活躍する有識者が集い、それぞれの立場から大阪の可能性について率直な意見を交わしました。
本レポートでは、二つのラウンドテーブルで交わされた議論のエッセンスを手がかりに、対話を起点とした都市づくりの視点と、万博の先に見据えるべき大阪の未来像を読み解いていきます。
- 万博の熱狂をその先へ。「交流創造」が大阪の未来を切り拓く【主催者代表あいさつ】
- 「大阪らしさ」はどこにあるのか 模倣を超えた都市ブランドの原点
- 記憶に残る体験は、いかに都市ブランドを形づくるのか
- 「夜」は都市の成長エンジン。世界基準の「24時間都市」で、大阪をアジアのハブへ
- ビジョンを実装するために、官民連携と次世代へのバトン
1 万博の熱狂をその先へ。「交流創造」が大阪の未来を切り拓く【主催者代表あいさつ】
モデレーター:伏谷博之氏
一般社団法人 日本地域国際化推進機構 代表理事
ORIGINAL Inc. 代表取締役 、 タイムアウトジャパン 代表
タワーレコード社長を経て起業。観光庁や文化審議会などで要職を歴任し、都市・文化・観光を横断する視点から都市の魅力創出に携わる。
<ラウンドテーブル#1 登壇者>
ジェイコブ・ベンブナン 氏 Jacob Benbunan
Saffron Brand Consultants CEO兼共同創業者
世界各都市や企業のブランド戦略を手がける第一人者。Meta(旧Facebook)のリブランディングなどを主導し、都市・国家のプレイスブランディングにも豊富な実績を持つ。
ジョナサン・マルボー 氏 JONATHAN MALVEAUX
Grand Alliance CEO、東京都観光アドバイザー
米国出身。日米欧で法律・金融分野のキャリアを重ね、現在は企業投資や都市戦略の助言を行う。国際的視点から都市と経済の成長を支援。
大﨑 洋 氏
一般社団法人 mother ha.ha 代表理事、大阪・関西万博催事検討会議共同座長
吉本興業社長・会長を歴任後、文化・エンターテインメント分野を軸に活動。大阪・関西万博催事検討会議共同座長として、都市と文化を結ぶ取り組みを牽引。
久米一郎氏
公益社団法人関西経済連合会常務理事・産業部長
関西電力で人事・渉外などを経験後、現職。DX、スタートアップ、GX、観光・文化など幅広い分野で、関西経済の持続的発展に向けた施策を推進。
小橋 賢児 氏
クリエイティブディレクター、大阪・関西万博催事企画プロデューサー
俳優から転身し、大規模イベントや都市型エンターテインメントを多数手がける。大阪・関西万博では催事企画プロデューサーとして、万博全体の演出と構成を統括。
<ラウンドテーブル#2 登壇者>
溝畑 宏 氏
大阪観光局 理事長
観光庁長官を務めた後、大阪の観光・都市魅力戦略を牽引。IRやスポーツ、MICEなどを通じ、国際観光都市としての大阪の価値向上に取り組んでいる。
吉川 ゆうみ 氏
名古屋芸術大学 特別客員教授、元 参議院議員
環境・サステナビリティや観光政策に携わり、政府・金融・教育分野で活動。アートやナイトタイム分野にも精通し、都市の多様な価値創出を探究。
ルッツ・ライヒゼンリング 氏 Lutz Leichsenring
VibeLab 共同創業者
ベルリンを拠点にナイトタイムエコノミーの政策・調査を牽引。国際機関とも連携し、持続可能なナイトライフと都市文化の共存モデルを世界各都市で提案している。
齋藤 貴弘 氏
ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事
渥美坂井法律事務所 弁護士
風営法改正を主導し、法制度と文化・観光を結ぶルールメイキングに注力。夜の価値を活かした新たな都市政策を支援している。
総合司会:meme
ラジオの生放送に加え、音楽イベント、ファッションショー、トークショーなど多彩な分野でMCとしても活躍。現在は、FM COCOLO「M's Groove Friday」のDJとして活動中。
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本稿は当日の議論をダイジェストとしてまとめたものです。各パネリストの経歴に裏打ちされた深い知見や、示唆に富んだアドバイス、そして会場を包んだ高揚感は、ぜひ動画アーカイブで体感してください。
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1 万博の熱狂をその先へ。「交流創造」が大阪の未来を切り拓く
【主催者代表あいさつ】 JTBコミュニケーションデザイン 執行役員 田中 中秋(たなかみつあき)
JTBは、1912年、訪日観光客の誘致と案内を行う「ジャパンツーリストビューロー」として創業しました。以来、交流を通じて日本の価値を世界に伝えるというDNAを、113年にわたり受け継いできました。
私たちJTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、そのDNAを基盤に、「コミュニケーションデザイン事業」を事業ドメインとし、MICE、PR、エリアマネジメントをはじめとする「人を動かす」領域で、企業・地域・社会をつなぐ価値創造に取り組んでいます。
先日閉幕した大阪・関西万博においては、入場券販売管理システムの構築・運営や、会場内外におけるボランティア運営など、多岐にわたる業務を担わせていただきました。
万博を通じて、大阪には世界から大きな注目が集まりました。これから問われるのは、その注目をどう活かし、都市としてどのような価値を選び取っていくのかということです。本日のフォーラムでは、万博の先を見据えながら、大阪がこれからどのような都市を目指していくのかを、多様な立場の皆さまと共に考えていきたいと考えています。そして、大阪をめぐる議論は、一つの都市に閉じたものではなく、これからの日本の都市がそれぞれの文脈で未来を描いていくうえでも重要な視点を含んでいるはずです。本日の対話が、そうした気づきの起点となることを期待しています。
<ラウンドテーブル#1>
2 「大阪らしさ」はどこにあるのか 模倣を超えた都市ブランドの原点
伏谷氏
大阪・関西万博という節目を経たいま、大阪は次のステージに立っています。万博で生まれた価値を再編集し、2030年の大阪IR開業を見据えながら、大阪は世界から"選ばれ続ける都市"になれるのか。今日はその可能性と現実を、皆さんと考えていきたいと思います。
ベンブナン氏
私は40年近く、YouTubeやMetaなどのグローバル企業のブランド構築から国家や都市のブランディングまで関わってきました。その経験から言うと、都市のブランドは感覚論ではなく、「プロミス(期待値)」「エクスペリエンス(体験価値)」「デリバリー(それを支える仕組み)」の三つで捉えるべきだと考えています。
世界111都市を対象とした調査で大阪は15位に位置しており、決して評価が低い都市ではありません。ただ、「プロミス」、つまり事前に抱かれる期待値という点では、まだ課題があると感じています。海外で日本の都市といえば、東京や京都が思い浮かび、大阪については明確なイメージが十分に形成されていないのが現状です。
一方で、実際に大阪を訪れた人の「エクスペリエンス」は非常に高い。大阪は、人を温かく迎え入れてくれる、人間的な魅力にあふれた都市です。だからこそ重要なのは、この体験価値の高さを、どう仕組みとして支え、どう期待値へと転換していくのか。また、デジタルインフラの整備や海外からのアクセス性など、「デリバリー」の強化も重要になると感じています。
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マルボー氏
私はニューヨークで育ち、32年前に来日し、約7年間大阪で暮らしました。現在は東京都の観光大使も務めていますが、複数の都市を見てきた立場から、次のように見ています。
今回の大阪・関西万博は、明確な「モメンタム(勢い)」を生み出しました。ただ、重要なのは、一過性で終わらせず、意図的に「ムーブメント」へと育てていけるかどうかです。
大阪は東京やニューヨークと同じ基準で競う必要はないと考えています。大阪でしか成立しない価値があり、それをどう形にするかが、万博後の最大のテーマになると思います。
大﨑氏
私は吉本興業で46年間、エンターテインメントの現場に立ってきました。その後、この2年間は大阪・関西万博の催事検討会議で共同座長を務め、改めて大阪という街と向き合ってきました。
大阪は長年、東京を追い、その東京は欧米をモデルにしてきました。でも、それでは「真似の真似」に過ぎません。そろそろ、そうした構図から本気で抜け出す時期ではないでしょうか。
大阪の価値は、どこかに新しくつくるものではなく、日常の中にあります。たとえば漫才の「ツッコミ」。あれは笑いの技法であると同時に、「あなたを放っておかない」という肯定の行為です。路地裏での立ち話や助け合い、笑い合う空気。そこにこそ、大阪の本質的な資産があります。
世界基準や東京基準ではなく、大阪独自の物差しが必要です。私はそれを「バッドデザイン」と呼んでいますが、多様な人が混ざり合い、常に再編集されてきた大阪の力こそが、これからの国際都市・大阪を支えるエンジンになると考えています。
小橋氏
私は俳優業を経て、現在はクリエイティブディレクターとして、エンターテインメントから都市開発まで、さまざまな「場づくり」に携わっています。
大﨑さんのお話とも通じますが、私が考える大阪の最大の魅力は、「混じり合うカオス」です。大阪には、多様な文化を受け入れる寛容さがあり、海外の方から見ても非常にウェルカミングで、開放的な街だと感じています。今回の万博では、世界中の人々が半年以上この街で時間を共にし、多様な文化に直接触れました。この体験は、人々の常識を確実にアップデートしたはずです。私は、この大阪でのチャレンジを一過性で終わらせるのではなく、グローバルスタンダードへと引き上げ、大阪から日本全体がより寛容で挑戦的になる流れを生み出していきたいと考えています。
久米氏
私は関西経済連合会の理事として、関西国際空港やけいはんな学研都市の整備、そして今回の大阪・関西万博の誘致など、民間・地方の立場から国家規模のプロジェクトに関わってきました。
今回の万博は、地方と民間が主導しながら成功を収めた、非常に稀有な大規模プロジェクトだったと思います。東京にはない関西特有の熱気や、大阪人の感性、社交性、そしてシビアなコスト意識が結実した成果だと感じています。
この万博のレガシーを次につなげ、大阪を戦略的な「MICE都市」へと進化させていく必要があります。再生医療やエアモビリティといった先端技術、アートやエンターテインメントなど、大阪ならではの強みを核に、都市づくりとブランディングを一体で進めていくことが重要です。
さらに、夢洲を中心としたベイエリアの再デザイン、そしてその先に広がる瀬戸内エリアの可能性を見据えながら、大阪の成長エンジンを次の段階へとつなげていきたい。官民が一体となり、新しい大阪の姿を形にしていくべきだと考えています。
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3 記憶に残る体験は、いかに都市ブランドを形づくるのか
伏谷氏
「シティブランド・バロメーター」では、特に「エクスペリエンス」の重要度が世界的に増しているという結果が出ています。なぜ今、世界的に「体験の価値」がこれほどまでに重要視されているのでしょうか?
ベンブナン氏
人は、心を動かす「体験」に出会うと、強く記憶に残ります。恋に落ちた瞬間や、忘れられないショーと同じです。結局、人が求めているのは「メモラビリティ(記憶に残るかどうか)」なのです。
都市ブランドにおいて体験が重要なのは、それが街の「魂」を最も雄弁に伝えるからです。大阪を訪れ、タクシーに乗れば、東京や京都とは違う、肩の力が抜けた空気を自然に感じ取るでしょう。大阪が外に開かれた港町であることは、説明ではなく体感として伝わります。
大阪は東京や京都と競う必要はありません。スペインのバレンシアやビルバオのように、独自の個性を磨くことで「選ばれる都市」になった例は世界に数多くあります。
「体験をどうデザインするか」一朝一夕に成し遂げられるものではありませんが、そこにこそ大阪が世界に選ばれ続けるための鍵があるのです。
小橋氏
私は「体験」をデザインする際、常に「なぜ今、これが必要なのか」を問います。今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」でした。本来、人間を含むあらゆる万物は同じ"星のかけら"から生まれ、つながっています。しかし現代社会では、その感覚が薄れ、分断や自己否定が生まれている。だからこそ今回の万博では、「生命と生命のつながり」を理屈ではなく、魂の記憶として感じて欲しいと考えました。数千に及ぶ催しを通じて、参加者自身が関わり、壁を越え、共に創り上げる「共創の場」でした。だからこそ人々は、これまで以上に「いのち」を実感し、深くつながる体験として、あの熱狂を共有できたのだと思います。
伏谷氏
万博で示された「体験を共創する熱量」は、大阪の大きな強みです。では、この力をどこに集中させ、世界で勝つのか。投資家の視点から、確かな成長戦略へ変えるために何が必要でしょうか。
マルボー氏
万博を成功させた実績が示す通り、大阪には体験やブランドを創る力があります。問題は「大阪は、何を目指す都市なのか」を、まだ定義し切れていないことです。
投資やスタートアップは東京に集中していますが、住みやすさやコストパフォーマンスを考えれば、大阪こそ世界中の才能を引き寄せられる都市です。人材もコンテンツも揃っている。あとは「自分たちは何者か」という答えを明確にし、迷わず実行に移すことです。
大﨑氏
日本の政治は東京に集約されていますが、経済は東京と大阪・関西が並び立つ「二軸」であるべきだと考えています。大企業が集まる東京に対し、大阪・関西の強みは、中小企業が層として存在している点にあります。この力をどう生かすかが、大阪の本当のパワーになります。
ビジネスやIPOにおいても、経済的な指標だけで測る必要はありません。誰かの役に立ちたいというソーシャルマインド、世話焼きでツッコミを入れながらも、誰一人取り残さず輪に迎え入れる。そんな「大阪らしい物差し」で挑戦を評価していいはずです。
私が目指しているのは、その場限りで消費される体験ではありません。10年後、20年後も心に残り続ける「残る経験」を、この大阪から生み出していきたいのです。
伏谷氏
今回の議論を通じて浮かび上がってきたのは、人だけでなく、都市や土地にも、長い時間をかけて蓄積された「記憶」や「DNA」があるという視点でした。大阪には、江戸よりもはるかに長く、多層的な歴史と営みが積み重なっています。そのうえで改めて問われているのは、「大阪とはどんな街なのか」という問いです。この問いに対して、自分たちの言葉で語れるようになったとき、大阪は世界の中で唯一無二のポジションを確立していくはずです。
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「国際都市・大阪」の実現に向け、熱いトークが繰り広げられた当日のライブ感あふれる動画を、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
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<ラウンドテーブル#2>
4 「夜」は都市の成長エンジン。世界基準の「24時間都市」で、大阪をアジアのハブへ
伏谷氏
ラウンドテーブル2では、「次世代のための24時間都市をデザインする」をテーマに議論を進めます。
世界の主要都市では現在、「ナイトタイムエコノミー」を含む「24時間都市」という考え方が、政策レベルで広がっています。このグローバルな潮流を大阪でどう生かすのか伺います。
ルッツ氏
私は、都市が「昼中心」から「24時間型」へと移行する戦略を立てるべきだと考えています。実際に大阪の夜を歩くと、とてもオープンで、人との自然な交流があり、食やサブカルチャーも含めて温かい文化を感じました。世界的には、生活のオンライン化によって対面の場が減る一方、気候変動の影響もあり、活動が夜へと移りつつあります。アムステルダムやトロントでは、夜を都市計画の一部として正式に位置づけ、防音支援やナイトメイヤー制度(夜の行政を専門に担当する責任者)を通じて、住民とビジネスの調和を図っています。
夜を単なる余暇ではなく、都市を支える成長エンジンとして捉えること。それが、これからの「24時間都市」をデザインする鍵になります。
溝畑氏
今回の万博では、夜遅くまで楽しめる会場運営や、御堂筋の深夜ライトアップなど、都市として「夜を使う」ための確かな一歩を踏み出すことができました。
一方で、美術館など公共施設の夜間開放では、既存ルールの壁に直面しました。世界ではナイトタイムが都市成長を支えていますが、日本ではまだ政策として十分に位置づけられていません。この課題意識こそが、次への原動力です。
私が描く大阪の姿は、「アジアのハブ都市」です。大阪を起点に京都・奈良・神戸へと広がる回遊性を強みに、夜を都市戦略の柱として官民で磨き上げていく。2030年の大阪IR開業を見据え、24時間動き続ける大阪を完成させることが、万博から引き継ぐべきレガシーだと考えています。
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吉川氏
これまで政治の立場から経済や外交に関わり、現在はアートと経済をつなぐ取り組みを続ける中で強く感じているのは、日本には本来、世界に誇る文化や芸術が数多くあるということです。ただし、世界を動かしているのは、欧米が築いてきたマーケットや社会の仕組みでもあります。まずはその構造を理解し、キャッチアップしなければ、日本や大阪・関西の価値は正しく届きません。そして、12年間の議員活動を通じて痛感したのは、この国を動かす原動力は民間にあるという事実です。政治や行政の役割は、挑戦を後押しし、足かせとなっている規制を取り除くことにあります。
ナイトタイムエコノミーも同様です。長年の規制や「夜」に対する固定観念が可能性を縛ってきましたが、大阪・関西の柔軟なマインドがあれば必ず変えられるはずです。24時間都市として「稼げる仕組み」をつくり、大阪が世界に誇る都市となるための一歩を、今日ここから皆さんと共に踏み出したいと考えています。
齋藤氏
私は弁護士として、2016年の風営法改正をはじめ、日本のナイトタイムエコノミーを巡る規制改革に関わってきました。その中で痛感しているのは、日本には世界で通用するアーティストや技術がありながら、それを活かす「制度」と「環境」が決定的に不足していたという現実です。過度な規制や夜に対する古い偏見が、市場の成長と挑戦を長年抑え込んでいると感じています。
しかし世界の先進都市では、夜を娯楽や観光の「おまけ」ではなく、都市競争力を高めるための中核領域として捉え、戦略的な投資をしています。
重要なのは、官民が連携し、「どのような夜の都市を目指すのか」という明確なビジョンを共有することです。大阪が本気で夜の価値に向き合えば、世界中の才能を惹きつける国際都市になれる。私はそう確信しています。
5 ビジョンを実装するために、官民連携と次世代へのバトン
伏谷氏
ナイトタイムを活性化しようとすると、やはり「夜」に対する偏見やバイアスは存在するのでしょうか。
ルッツ氏
もちろん、どの都市にも夜に対する偏見やバイアスは存在します。それを乗り越える鍵は「コラボレーション(共創)」です。世界100以上の都市で実証されている「ナイトメイヤー」のような仕組みを導入し、夜の現場で文化をつくっているプレイヤーを政策決定に正式に巻き込むことが不可欠です。夜の価値はまだ十分に理解されていないからこそ、行政と民間が経験を共有する「学びと対話の場」を用意する必要があります。夜を「リスク」ではなく「チャンス」と捉え、対話を通じて具体的な政策へと転換していく。その土台づくりこそが、大阪が国際都市として次の段階へ進むために、今取り組むべきことです。
溝畑氏
ルッツさんの言う仕組みを動かすには、強力なリーダーシップが不可欠です。Jリーグ創設やワールドカップ招致では、誰も成功をイメージできない状況からのスタートでした。そこで学んだのは、情熱あるリーダーが明確なビジョンを示し、人々を共感で束ねることこそが物事を動かす唯一の道だということです。未知の世界を導くのはパッションしかなく、最終的に重要なのは、やるかやらないか、その覚悟です。
伏谷氏
ナイトタイムエコノミーや2030年の大阪IRは本来、国策として始まったはずです。しかし、勢いがしぼんでしまった感もありますね。
吉川氏
ナイトタイムエコノミーが「しぼんでしまった」ように見えたのは、政策が現場の『実利』と十分に接続されていなかったからだと思います。
私がこの政策に注力してきた理由は明確です。海外からの観光客にアンケートをとると、「日本の夜には遊ぶ場所やお金を使う場所がない』と回答。欧米では観光消費の約1割が夜に動くのに対し、日本は1%未満。大阪が東京や京都に負けない消費額と宿泊促進を実現するには、質より量の観光から脱却し、ラグジュアリー層やアートコレクターを惹きつける戦略が必要ですが同時に、ナイトタイムを地域経済の具体的な実利として示せば、「自分たちの儲けの話だ」と自分事化できる。このリンクこそが、大阪を世界に誇る24時間都市に進化させる鍵だと信じています。
齋藤氏
吉川さんのおっしゃる通りだと思います。ナイトタイムの推進には初期の政策的リードが必要ですが、いずれは民間が主体となり、『自分たちで稼ぐ』という強い意志を持って価値を生み出すフェーズへ移行しなければなりません。不動産デベロッパーや地域のステークホルダーが一体となり、エリア全体の魅力をどうデザインするか。その視点が不可欠です。そして何より重要なのが、このバトンを次世代へどう渡すかです。今の日本には、パッションはあっても最初の一歩を踏み出しきれない若い世代が多くいます。彼らが主体的に動き、新たなリーダーとして育つ環境を意識的に整えることこそが、持続可能なナイトタイムエコノミーを実現する鍵だと考えています。
伏谷氏
大阪には、世界を驚かせるポテンシャルが眠っています。今こそ官民が一体となり、夜という時間を「再編集」して、新しい大阪の価値を共に創り上げていきましょう。
皆様、本日は非常に熱く、奥行きのある議論をありがとうございました。
【懇親会の様子】
ラウンドテーブル#2の終了後、カンデオホテルズ大阪ザ・タワーのスカイバンケットにて、懇親会を開催しました。登壇者と参加者の皆さんで大阪の未来についてカジュアルに語り合いました。
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大阪・関西万博はゴールではなく、都市の未来を問い直す契機であると考えています。
大阪がこれから世界に選ばれ続ける都市であるためには、制度やハードだけでなく、人と人、官と民、世代と世代をつなぐ「対話」が不可欠です。
JTBコミュニケーションデザイン(JCD)は、コミュニケーションをデザインする企業として、こうした対話を起点に、多様な主体の意思をつなぎながら、それぞれの都市が持つ価値に向き合い、未来を共に考え、描いていく存在であり続けたいと考えています。
本稿は当日の議論をダイジェストとしてまとめたものです。各パネリストの経歴に裏打ちされた深い知見や、示唆に富んだアドバイス、そして会場を包んだ高揚感は、ぜひ動画アーカイブで体感してください。
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