- 訪日インバウンド促進
- Report
2025.05.07
再開発で進化する渋谷で、訪日外国人との接点を創出
観光支援施設「shibuya-san」を拠点とした新たなインバウンドプロモーションとは

東京で最も外国人旅行者が訪れる街・渋谷。現在更なる魅力向上を目指して、100年に一度とも称される大規模な再開発が進められています。その渋谷に2019年「国際競争力を強化する観光支援施設」としてオープンしたのが、東急不動産株式会社様(以下、東急不動産)を事業主体とし、JTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)が運営する、渋谷フクラス1階にある観光支援施設「shibuya-san(シブヤサン)」です。
今回は東急不動産 渋谷事業本部 渋谷運営事業部の五十幡氏と「shibuya-san」の副館長を務めるJCDの小川が、月間約2万人もの人が訪れる「shibuya-san」を拠点としたインバウンドプロモーションの新たな可能性について語ります。
- 渋谷の再開発とともに国際競争力を強化。街に必要とされる機能を備えた観光支援施設を開業
- 「shibuya-san」を新たな交流が生まれる場に
- 民間の観光案内施設だからこそ自由度の高いインバウンドプロモーションが可能
1 渋谷の再開発とともに国際競争力を強化。
街に必要とされる機能を備えた観光支援施設を開業
五十幡氏
東急グループでは渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内を「広域渋谷圏」と定め、点から面へと広げた渋谷の街づくりを進めています。渋谷駅周辺では100年に一度といわれる大規模な再開発が行われており、様々な商業施設やオフィスビルなどの開発・運営はもちろん、デジタル活用やサステナブルな取組も強化し、街の国際競争力向上に貢献しています。東急東横線の地下化を契機に渋谷駅前の再開発がスタートし、2012年には「渋谷ヒカリエ」が開業、2024年までに「渋谷ストリーム」「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷フクラス」「渋谷サクラステージ」の5つの建物が開業しました。現在はハチ公広場のほか、「渋谷スクランブルスクエア」の新たな中央棟と西棟の建設が進んでいて、それらが開業すると渋谷駅前の再開発が完成するという状況です。
渋谷駅前の5つの建物にはそれぞれ特色がありますが、特に2019年に開業した「渋谷フクラス」は1階部分に羽田・成田空港直結のリムジンバスが発着するバスターミナルがあり、そのすぐ正面に観光支援施設である「shibuya-san」があります。バスターミナルを併設することで渋谷へのアクセスを改善させ、外国人旅行者に対しても「空港直結」というワードを訴求し、より渋谷の国際競争力を高めています。JCDさんとは当社が運営している商業施設やホテルとの取引実績があり、以前から多くの観光案内施設を運営していることも知っていました。インバウンドや観光案内施設運営に関する豊富なノウハウに期待し、「shibuya-san」の全体プロデュースという形でご一緒させていただきました。
小川
「shibuya-san」は渋谷駅から徒歩1分の場所に位置しており、電車や高速バスで渋谷に来られる方にとってもアクセスが良く、渋谷観光の拠点になっています。観光案内だけではなく、手荷物の預かりや充電、Wi-Fiなどのサービス、カフェ、土産物の販売など旅行者に必要とされる機能や設備も充実しています。特に海外から訪れる方は大抵スーツケースを持っているため、荷物預かりサービスは時間帯によってはお断りすることもあるほど多くの旅行者にご利用いただいています。設備面が整っている事が「shibuya-san」の特徴でもあります。
五十幡氏
駅中にもコインロッカーはありますが、大きいスーツケースが入らなかったり、外国人の方にとってはそもそも使い方がわからなかったり、交通系ICでなければ支払いができなかったりといったハードルが存在します。ですが「shibuya-san」に来ればスタッフが多言語で対応してくれて、スムーズに手荷物を預けることができるので外国人旅行者にとっても気軽に利用できる環境なのではないかと思います。
小川
スタッフが全員外国人で構成されているのも日本の観光案内施設の中では珍しいと思っています。10か国20名以上のスタッフがいて多言語対応が可能なので、外国人旅行者とっては慣れ親しんだ言語でコミュニケーションが取れることが安心感となり、その点も「shibuya-san」の利用率や満足度の高さに繋がっているようです。ちなみに東京都が令和5年に発表した「訪都外国人旅行者の行動特性に関する調査結果」によると、外国人旅行者が訪問した場所は新宿や銀座を抑え渋谷が67.1%で最も多く、また「一番期待していた場所」「一番満足した場所」の調査でも渋谷と答える外国人が最多という結果になっています。最近では週末を使って日本を訪れるアジア圏の若い旅行者が増えてきていて、その中でも渋谷は外国人旅行者が特に急増しています。このような現状からも、渋谷において「shibuya-san」が果たす役割はとても大きいと実感しています
2 「shibuya-san」を新たな交流が生まれる場に
五十幡氏
「shibuya-san」は、観光案内機能に加えてイベントや地域交流が出来るスペースになっていて、イベントをきっかけに世界と渋谷の人が交流し、新しい文化が生まれていく拠点としての役割も担っています。内装に関しても有名な建築家が設計していまして、朱色を基調としたデザイン性の高さや照明・音響といった設備にも注目していただきたいポイントですね。また、施設内に併設したドリンクカウンターでは、夜間になるとアルコールの提供を行っているのですが、これもほかの観光案内施設との違いのひとつかもしれません。
小川
イベントスペースは交流拠点としても活用されていて、企業の名刺交換や意見交換、勉強会を行う「SHIBUYA BALCON」の活動の場としても提供しています。過去には、鳥取県の方々が地元の食べ物やお酒を持ち寄って紹介するアンテナショップのような使い方をされた事もありました。
五十幡氏
他にも、過去には企業によるポップアップスペースやイベントスペースとしての利用や、英語を話すことに少しでも慣れてもらうため、決まった時間帯に日本語の使用を禁止する「shibuya-san English バータイム」なども定期的に実施しています。
3 民間の観光案内施設だからこそ自由度の高いインバウンドプロモーションが可能
小川
「shibuya-san」には月間約2万人、平日でも約700人が訪れています。個人的な肌感覚ですが、欧米圏とアジア圏からの来訪がそれぞれ4割、日本人が2割と、幅広い国籍の方にご利用いただいています。バスターミナルからすぐなので、バスの待ち時間に滞在される方が多い印象ですね。ですから、外国人の方向けにサンプリングの配布やアンケートなどを行う場所として活用することもできます。街頭に比べ、落ち着いた環境で行うことで、より精度の高い回答が得られるのではないかと思います。また、「SHIBUYA BALCON」のように定期的なイベントも開催しているので、企業のメーカー様にお酒や食べ物をご提供いただくプロモーションの場としてもご利用いただけます。
五十幡氏
観光案内施設は行政が運営しているところが多く、プロモーションの場として利用する際には一定の規制がある場合もあります。ですが、「shibuya-san」は東急不動産が事業主体となる民間の施設ですので、自由度の高い企画やイベント運営、多様な企業のPR活動で利用できることが強みですね。
小川
実際にカード会社様からのご依頼で、ユーザーがクレジットカードを提示することで手荷物の預かりや、ドリンクを提供するPR施策に活用いただいています。また、お酒メーカー様がバースペースを企業ロゴで装飾し、試飲提供を通じてプロモーションの場としてのご利用された例もございます。「shibuya-san」は適度な広さでもあり、トライアルとしても活用しやすい施設ではないかと思います。
五十幡氏
渋谷から原宿までは徒歩で移動する方も多く、原宿の「東急プラザ原宿 ハラカド」や「東急プラザ表参道 オモカド」など、渋谷広域圏にある東急不動産の施設と連携する事で、プロモーション施策を更に広がりをもたせることができます。昨今、インバウンド需要は様々な業種で不可欠な要素となっており、「shibuya-san」は多くの企業や団体から視察が入るほど、注目を集める観光案内施設となっています。
小川
イベントスペースとしての利用やアンケートの実施、サンプリング、プロモーションなど様々な活用が可能な「shibuya-san」は、これからインバウンド施策に取り組む方にとっても気軽にご利用いただける場所です。観光案内所としての機能はもちろんですが、「shibuya-san」を通して渋谷でチャレンジしていきたい方の支援やPR、渋谷に住む方や働く方との交流が生まれる場としての役割も強化し、訪日外国人が多く集まる渋谷でインバウンド需要を活用した事業を更に盛り上げていきたいと考えています。